高校授業料無償化は地方を見ているか

hiyoko

国立医学部医学科に田舎公立高校から現役合格。医学生の日常や合格までの勉強法、その他関連お役立ち情報をお届けします。受験生時代は東進衛星予備校・東進東大特進(5教科特待)・Z会(通信教育)を利用していました。

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最近のTVニュースでは私立高校も含めた「高校授業料無償化」が話題だ。しかしどうにも、地方の存在を無視して首都圏や大阪の都合に国全体が巻き込まれているようにしか見えない。なぜかTVでは諸手をあげて皆が賛成しているように見えるが、とても国民の総意(特に地方)とは思えない。実際に日経新聞のエコノミクスパネルでも、多数が懐疑的だ。
https://vdata.nikkei.com/economics-panel/education-policy/highschool-tuition-free/2/

そもそも地方は公立メイン

そもそも、地方(少なくとも筆者の地元)の高校受験は公立がメインで、公立に匹敵するレベルの私立はほとんどない。TVでは、私立高校も支援対象にすることで「本当に受けたい高校を受けることができて素晴らしい!」と称えているが、TVにいつも取材されている東京の皆さんとは異なり、我が地元の進学希望者が本当に受けたい高校はほぼ公立である。私立は一応滑り止めとして受けにいくだけだ。つまり、今回の支援拡充の恩恵にあずかりにくい。我が市内には私立高校は1つもありません。

大学受験では都会の一貫私立が優位

難関大学を受験しようとして初めて気づくのが、合格者は有名中高一貫校の出身ばかりであることだ。彼らは中学生、いや中学受験のために小学生の間から頑張っているのだから有利なのは当然だ!と仰る方もいるが、それは間違いだ。もう一度言うが、本当の地方には私立高校はない。もちろん、中高一貫校なんてものもない。一貫校の立地には明らかに都市部への偏りがある。「小学生の間から頑張る」なんて環境は都会に引っ越しでもしないと用意されていないのだ。一貫校の存在自体は悪いことではないと思う。しかし、そんな環境はぜいたく品に見える。そんな一貫校に税金を投入し、地方の公立とほぼ同じ値段で通えるとなるとこれは明らかに不公平だ。地方の難関大受験生からすれば、納税を通してぜいたくな私立高校に通う皆さんの授業料を出してやり、結果大学入試での強力なライバルを育てるという、信じられない話だ。実際に、東京大学の入学者を見てみると実に私立有名中高一貫校の割合が高くなっている。この数をさらに高めたいのか?多様性がますます失われる。一部の大学では推薦入試に女子枠を導入したことでいろいろ揉めているが、こうなってくると、なぜ「地方枠」とか「非一貫枠」の話は出てこないのか不思議だ。地方の受験生にはどういう支援がなされているか?教育格差を助長する結果が見えている。

主な矛盾点

今回の支援拡充の主な矛盾点・問題点を指摘しておこう。
・田舎には私立高校がそもそも少ない(上の通り)
・費用対効果が薄い
 日本の高校進学率は既にかなり高く、この政策の効果は進学率向上ではなく「親の負担軽減」に他ならない。所得制限を設けない狙いが不明だ。私立への進学を選択するならばその分の追加の費用負担は当然ではないか?これは何の不公平でもない。費用面で私立高校を諦めても公立には進学できるのだから、費用の問題で進学自体を諦める人がいる、大学進学の方の支援に少しでも回すべきだ。この「無償化!」という響きはパフォーマンス優先感が否めない。
・私立高校はぜいたくなお金の使い方をしているように見える
 私立は学費が高い分、充実した教育を受けられることがウリであり、ここにお金を使う。実際に筆者が見学した私立高校は校舎がピカピカ、広い、受験生に大盤振る舞いする、など、公立にはできないことをやる。公立には毎週外国人と英会話するなんていうお金のかかるカリキュラムはない。私たちはこの費用まで税で負担するのか?
・公立の競争力低下
明らかに公立高校の競争力は低下する。だって学費がほとんど同じなんだから。公立には制約が多すぎる。日本に学費のかかる学校を残そうという謎戦略に見える。
・学生が都市部に流出する
実際に筆者も、都市部の有名私立高校をチャレンジ受験している。「チャレンジ」なのは、そもそも学費の問題で受かっても通えないからだ。田舎ではある偏差値以上の高校は都市部に行くしかなくなる。今までは、学費や「遠い」という問題で、受かる実力があっても結局地元の公立に進む人も多かったが、これからは支援でういたお金で新幹線通学なんて始める人も出るかもしれない。これが本当にいいことか?
・そもそも高校受験がない中高一貫校もある
 中高一貫校の中にも、高校から入学する枠がそもそも用意されていない学校だってある。このような学校に通う高校生にまで学費が支援されることは、今回TVで宣伝している理念に合わない。だって選択肢に入れられないんだもの。
・結局塾代に回る
 支援を受けることで浮いたお金はどこへ行くか、多分塾業界を潤わせるのではないか?これは負のループだ。私立組はさらに塾に回す予算が増え、格差拡大への第一歩になりかねない。ちなみに当然ながら?田舎には塾は少ない。

TVが偏っている

今回のTV報道を見ていると、ほとんどが無償化支援に賛成の立場のようである。その一方的な称賛の事情はよく分からないが、都会の私立高校を取材しては、生徒に「東京都在住と千葉県在住で学費に差があるのはおかしい!」とか喋らせて情を集めている。筆者から言わせれば「東京都が特殊なだけ」である。東京や大阪の事情を日本全体に押し付けられても困る。極め付けは、親に、「学費だけ支援されても、入学金や制服、学用品や交通費も高いのでそこまでも支援して欲しい」とか言わせてそれで政権批判している。信じられない。ちなみに筆者の公立高校は中学校の制服をそのまま着れる学校で、それで何も問題なかった。